金庫のダイヤルを回すとき、僕の頭の中ではいつもピンクパンサーが流れている。さすがにカンカンチーンはやらないけれど。貴重品が入っている大事な金庫だというのに、何故だか金庫を開けるたびにドリフの泥棒のコントを思い出すのだ。
そんな僕の念が金庫に伝わってしまったのかはわからない。わからないけれども、今日金庫を開けようとしたら、まるでドリフのコントかというくらい見事に金庫のダイヤルが取れてしまった。ドリフのコントだったらいかりや長介から大目玉を食らうところである。だけど僕の家にはいかりや長介どころか、一人暮らしなのでツッコミを入れてくれる人もいない。これが加藤茶ならダイヤルを2度見するところだけど、僕の場合はただただ取れたダイヤルを手に茫然とすることしかできなかった。現実はこんなものだ。笑いなんておきやしない。誰も笑ってはくれない。
こんな状況を打破するために、色々面倒な手続きをしなくてはならないんだろう。それを想像するだけでため息が出る。コント終了時の曲でも流れて「あぁ、面白かったね」で終わることができればいいが、そうはいかない。何せ金庫の中には僕の全財産が入っているのだから。
調べてみたら、こういう場合はカギ屋さんに頼めば何とかしてくれるそうだ。早く電話して、このつまらないコントを終わらせてもらおうと思っている。